Prince Valiant のどこがすごいのか?

そのうちやるつもりだったがなにやら買ってしまったひとがいるようなので急いで説明しよう。


Prince Valiant: the Storytelling Game は、1989年にケイオシアムから出版された。
デザイナーは Greg Stafford。
アーサー王もののアメコミが原作で、主にRPGは初めてというひとを対象としている。
つまり入門者向けの原作ものRPGだ。
日本で言えばフォーチュンクエスト・コンパニオンやCLAMP学園TRPGのようなものだろうか。


すごいと思った点はふたつある。


一つ目は、「簡単で面白い」システムであること。
入門者向けRPGのなかには既存のシステムを簡略化しただけのものがあるがこういうものはたいてい「簡単だけどつまらない」システムでしかない。
Prince Valiant はシンプルだが初心者だけでなくベテランのプレイヤーでも楽しめるようにデザインされている。
例えば、判定はすべてコインで行う。*1
能力値と技能値の合計と同じ数だけコインを投げて、コインが表がだったら成功。*2
表が出た数によって成功度が決まるというどこかで聞いたようなシステムだ。
ほかにもいろいろ工夫があるのだが省略。*3
この「簡単で面白い」というデザインポリシーは後のシステムにも影響を与えていて、Fudge や Sorcerer のデザイナーなんかも言及している。


もうひとつのすごいところは、こちらのほうが重要だと思うが、「複数ゲームマスター制」をルール化したことである。
Prince Valiant では、ゲームの進行役はストーリーテラーと呼ばれる。
初心者向けのベーシックルールでは、普通のRPGと同じようストーリーテラーがゲームを進行する。
上級者向けのアドヴァンスドルールでは、本来のストーリーテラーはチーフ・ストーリーテラーと呼ばれるようになる。
なぜそうするかというと、プレイヤーが一時的にストーリーテラーになることができるのでそれと区別するためだ。
プレイヤーはセッション中に立候補してチーフ・ストーリーテラーに承認されればストーリーテラーになり、セッション中の特定のシーンを演出することができる。
最終的な決定権はチーフ・ストーリーテラーにあるのであまりにひどい場合は演出を却下されることもある。
うまくシーンを演出できた場合はごほうびとして Storyteller Certificate というものをもらえる。
これはなにかというと以後のセッション中に一回だけ判定抜きで特殊な効果を起こすことができる。わかりやすくいうとN◎VAの神業のようなことができる。
このような「複数ゲームマスター制」をルール化したのは Prince Valiant が世界で初めてではないかといわれている。
だから買ってみたんだけどね。


以上。

*1:これはサイコロがなくても遊べるようにという配慮

*2:能力値と技能値の上限はそれぞれ6。それに装備などによる修正が加える。一度に最大で十数個のコインが必要になるが財布のなかにそれくらいはあるよね?

*3:能力値が二つしかなかったりとか